Mjuka

てきとうに。

記憶のなかの音楽(高校卒業まで)

 小学生ぐらいのころ、僕は音楽をあまり耳にするような環境にいなかった。

 CDを買うお金も、インターネットもなかった。たぶん、当時の多くの子どもがそうだったように。(1990年代の話)

 そして最大の障害として、テレビ、殊に音楽番組を視聴しない家庭だったことが挙げられるだろう。

 そんな生活を送りながら、とくに文化的不足感を覚えることなく中学生になった僕は、姉からポータブルMDプレイヤーを譲り受けた。victorのオレンジ色のものだ。譲り受けたと書いたが、きっちりお金を取られている。

 そのころ僕がどんなアーティストを聴いていたという記憶はないのだが、いまでは再生機器を失ったMDのラベルにはポルノグラフィティ倉木麻衣GARNET CROWなどの名前が書かれている。いわゆるJ-popと総称していいだろう。

 記憶にも残らないほど、たいして熱を入れて聴いていたわけではない。つまりぼくは、それほど「音楽」というものについて関心がなかった。正直にいえば、ギターとベースの区別すらついていなかった。

 けれど、そんな音楽に対する無関心も、パソコンとインターネット、そしてデジタルオーディオプレイヤー(DAP)を手にしたことによって一変した。ちなみに、はじめて買ったDAPもvictor製だった。

 いまではなんの感動もなくインターネットに触れているが、中学生のころの僕は、それこそ魔法でも身につけたような気分だった。

 そうして「魔法」を使ってたくさんの情報に触れていくなかで、ひとつの大きな騒動に出会う。「ハピマテ騒動」だ。

 この騒動についてはそれこそ「魔法」を使って各人に調べてもらうとして、あの騒動の熱狂にあてられてしまった僕の趣味は、徐々にアニメソングに傾倒していった。

 しかし、そうして趣味が形成されていくなかで、おそろしいことにインターネットはまたしても僕に新しい刺激を与えてきた。それは、muzieというインディーズ音楽サイトだ。

 ここではユーザーの検索能力しだいで、いくらでも良質な音楽に無料で出会えた。当時(2000年代前半)は、muzieのサーバーや自宅の回線速度の影響で、いまにして思えば永遠とも感じるようなダウンロード時間を要したが、僕はいくつもの音楽をダウンロードし、聴いては一喜一憂していた。(その過程でRealPlyerの使えなさを経験した)。

 そしてその体験はいまの僕の大部分を形成したといってもいいだろう。それだけ、muzieというサイトはインパクトがあったのである。

 当時登録されていたアーティストを挙げてみよう。

霜月はるか

片霧烈火

茶太

fripSide

riyarefio名義。現eufonius ボーカル)

 アニメを観るひとであれば、ひとつくらいはその名前をみたことがあるのではないだろうか。

 こうしてmuzieでインディーズ音楽に触れていくうちに、僕は知ってしまう。コミックマーケットという存在を。

 そこでは先ほど挙げたアーティストたちがCDを頒布しているという。(のちに同人音楽というジャンルを知る)。しかし、会場は遠く、お金もない。行くことはなかった。そして未だに行ったことがない。

 muzieで音楽を聴き漁るのに並行して、僕はKOTOKO川田まみ、といったI've soundを知る。時期的にアニメ『スターシップ・オペレーターズ』(2005年)ではじめて知ったのではないだろうか。

 高校受験が迫るなかでも、やはりラジオなどでアニメソングを聴いてた。そのころ、Sound HorizonALI PROJECTを知る。中二病全開である。ただあまり長続きしなかったので良かった。

 こうした音楽的経験を重ねながら、僕は高校生になった。バンドである。男子高校生はおしなべてバンドに走る。

 そして洋楽を聴くようになる。中二病は完治していなかった。

 Dream TheaterProtest The HeroArch Enemyなどを聴いていた。テクニカル志向だった。

 偏りつつもいろいろな音楽を聴いてきたが、蓋を開けてみればKOTOKO一強の高校生活だった。ただやはり、I've soundの特徴である打ち込み音に飽きたころは、ギターを前面に押し出したバンドサウンドを好んで聴いていた。

  そうこうするうちにまたしても受験である。軽音楽部部室はどこも放課後ティータイムである。(嘘)

 しかし、その受験もさっくり終わり、とくにやることもなく、友人に数学を教えながらジュースをごちそうしてもらう日々……暇である。

 同人音楽のサイトをリンクからリンクへ辿るが、意外と世界は広がらない。同じ界隈でしかけっきょく繋がっていないのだ。

 そして気がついたとき、僕は『CLANNAD』を手にしていた。(補足。『CLANNAD』はいわゆるエロゲではないので、18歳未満や高校生が買っても問題ない)

 今回は音楽の話なので『CLANNAD』そのものの話ではないのだが、あれは名作だといまでも思っている。

 僕は『CLANNAD』によって、PCゲーム音楽に関心を抱くようになる。そして、その世界にもまたmuzieで出会ったアーティストの名前を発見するのである。

 こう書くと、ある指摘を受けるのではないかと思う。それは、「KOTOKO川田まみ(I've sound)からPCゲーム音楽への入口はあったはずだ」というものだ。

 たしかに、入口はあったかもしれない。むしろ、そちらの方が順序的に正しいだろうと僕も思う。しかし、気づかなければ入口は入ってゆけないのだからしかたない。

 

 とりあえず高校卒業までの音楽遍歴を書いてみた。長くなってしまったので、大学入学以降はべつの記事にしてアップすることにしよう。